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木工四方山話(Moku-koubou Soutarou)

最終更新日:2005-06-10


No.009【木工の伝統的技法について】・・・2004-11-27


 木工房宗太郎は、そのもの造りの姿勢として、『木工の伝統的な技法を駆使し、出来るだけ木にやさしい工法を選択します。これにより、長い年数を経て育って来た木を長くご愛用して頂けると考えています。』と謳っています。
 そして、他の多くの木工家、木工房も同じように伝統的技法をと・・・。

 ここで、自問自答の意味も含め、木工の伝統的技法(以下、伝統的技法と略す)について、考えたいと思う。


@木工の伝統的技法とは何か?

 まず、ここで言う伝統的技法とは、加工方法や表面の仕上げ(削り)方法、塗装などにおけるそれではなく、主に指物で言う継手(つぎて)や仕口(しぐち)による各部材を結合するための技法(工法)や、構造と考えていただきたい。
 木の板と板を繋げる、角材と角材を繋げる、板と角材を繋げる、板と丸材を繋げる・・・この時に用いる伝統的技法を継手や仕口と言うのである。
 これらの技法は、日本だけのものではなく、世界各国にそれぞれの文化としてあるが、その種類、レベルの高さとしては、日本のそれがトップと言って良いと思う。

 逆に、伝統的でない結合方法(技法)と言えば、丸ダボやビスケットジョイントを用いた接着などがあげられる。


Aなぜ、多くの種類の技法(継手や仕口)が、存在するのか。

 私の持っている継手や仕口についての図書をざっと数えたところ、5〜6百種もの継手や仕口が載っており、これも、代表的なものであるから、実際には、千を超える種類の技法が存在すると考えられる。

 なぜ、これまでも多くの種類の技法が生まれて来たか、それは・・・木の種類(堅い木、柔らかい木、反りやすい木など)、求める機能の違い、必要な強度、構造の違い、寸法の違いなどの組み合わせにより、それぞれの場合に適する技法を使う必要があると木工の先達らが感じ、考えた結果であろう。
 自然の素材”木”を使ってもの造りをするが上での、必然的結果とも言えよう。


B伝統的技法を使って結合した木工品・家具が良いものなのか?

 『適する技法』を選び、『適切な精度で加工』し、『正しく組み立て』られた木工品であれば、良いものであると言えよう。

 そうでない場合は、良くないもの。
 伝統的技法・木の特性を理解せず、あるいは、加工・組み立て技術レベルが低い場合、当然、こうなる。
 間違っても、伝統的技法で作った良い家具ですなどと、言っては欲しくない。


C『適する技法』とは

 木工品に限らず、構造設計をするにあったっては、機能以外に、どの部材、どの結合部には、どの様な力(荷重)がかかるのか・・・とうい様な事を常に考えなくてはいけない。
 そのかかる荷重によって、部材の寸法(形状)や、結合方法が決ると言っても良い。
 もちろん、意匠(デザイン)的理由で、必要以上の大きさの部材を使ったり、必要以上強固な結合方法を選択することは、出来るが、一部の例を除いて、重くて、無骨な・・・センスの悪いものとなるであろう。

 木工品の場合、これに加えて、木の収縮や反り、方向性のある強度や、物性値の幅なども加味して技法を選択する必要がある。
 木の収縮や反り、方向性のある強度などを味方として活用し、長く使える、更に言えば、年数が経てば経つほどより強くなる結合方法の選択、それが重要であると言えよう。


D『適切な精度で加工』とは

 全体的寸法(幾何)精度も当然ではあるが、結合部について言うと、締める量とその位置・方向が適切になる精度の加工と言えよう。

 締める量とは、鉄鋼で言うところの、はめあいにおける”締め代”である。
 鉄(SS材など)の場合、材の強度の方向性はなく、”締め代”による摩擦力(引き抜き抗力)は計算出来、また、物性値(線膨張係数)より穴側の部材を何度温度上昇させれば組み立てることが出来るかも計算できる。
 このため、設計時点に設計者が、それぞれの加工精度を公差として図面上で指示し、加工者はその図面通りの加工さえすれば良いことになる。
 よって、各部材を加工するひとが別のひとでも問題ないと言えよう。

 ところが、木工の場合、そうはいかない。
 設計の時点で、大まかには決めているが、実際には、加工する時点で、加工者が経験から締める量を決めている、というか、決めるべきものであると、私は思う。
 なぜなら、物性値の幅が大きいからである。
 樹種が多く、例え同じ樹種でも、強さや堅さなどに幅があるからである。

 私などは、はじめて使う木材の場合、幾通りかの”締め代”で試作をし、その量を決定する。
 また、加工時には、はめあいを確認しながら加工する。

 木工の場合の加工精度とは、もの造りの上で一般に言われるそれとは、少し異なり、設計・品質管理を含んだところの、加工精度と言えよう。

 木工で加工精度が悪いと、どうなるかの例を以下に記しておこう。
     ・締め代が小さ過ぎると、結合が弱く、壊れやすく、長く使えないものになる。
     ・締め代が大き過ぎると、組み立てに苦労する、または、組み立たない。
     ・締める位置を間違うと、組み立てに苦労したり、組み立たなかったり、また、材が割れたりする。
     ・締める方向を間違うと、材が割れたり、全体的寸法精度が悪くなる。

E『正しく組み立て』とは

 木工品は、『適する技法』を選び、『適切な精度で加工』したとしても、正しく組み立てないと良いものにはならない。
 簡単に言うと、木に無理をさせずに優しく組み立てるとでも言えば良いだろうか?

 ホゾ組みを例にとって話そう。
 ”木に無理をさせず”とは、例えば、最終的に直角に組み立つ部材であれば、直角を保ちながら組み立てるということである。
 木は、柔く、変形する(潰れる)材料である。
 だから、締め代をつけても組み立てることができる。
 逆に言えば、最終的に直角に組み立つ部材でも、斜めに組み立てることも出来る。
 そうするとどうなるか、ホゾや、ホゾ穴は、変に変形するし、ホゾに無理がかかり、壊れる(折れる)場合もある。
 仮に、折れなくても、全体的寸法精度が悪くなる。

 構造的に、どうしても、最終的に直角に組み立つ部材を、直角に組み立てられない様な場合に、ホゾを短くするなどと言う馬鹿な方法はとらず、他の適切な継手に変更して欲しいものである。


F伝統的でない結合方法(技法)丸ダボについて

 ホゾ組みを例にとって話したついでに、ホゾの代わりに丸ダボを使うとどうなるかということに触れておきたい。

 まず、丸ダボを使った継手は、接着剤に頼った結合方法であることを言っておきたい。
 なぜなら、”締める量とその位置・方向”の全てが、適切にすることが出来ないからである。

 締める量は、購入したダボの径と穴を加工するキリの径で、必然的に決ってしまい、調整できないのである。
 キリを数種(0.1mm単位?)使い分ければ良いのではと言われる方もおられるかもしれないが、これがまた、問題がある。
 穴側部材の木目方向に締め代を増やすと言うことは、木目に直角な方向にも締め代が増えるということであり、結果、組み立てる時に、材が割れるということになるからである。
No.004【木材の木目の方向について】を参照方。)
 これが、締める方向を適正に出来ない(選べない)理由でもある。

 同じ丸形状でも、丸ホゾであれば、クサビで締め代を調整したり、方向性を持たせたり、わざとこじったりすることが出来るのであるが・・・。

 また、当然と言えば当然であるが、丸ダボは、断面形状・寸法を任意に選択することも出来ない。

 では、なぜ、丸ダボを使うのでしょうか?
 安価な量産品の多くは、丸ダボを使っている。
 理由は簡単です・・・量産に適するからです。
 ホゾを加工する手間も調整する時間も、ホゾ部分の材料さえいらないのですから。
(繋ぐ部材の両側に穴を開け、接着剤を着け、ダボを入れ組み立てれば終わり。)
 時間がかからなければ、安く売ることが出来る。
 だから、丸ダボを使うのです。
(安いんだから、長く持たなくて良いという論理ですかねぇ・・・。)


G最後に

 今回、改めて木工の伝統的技法について考え、ここに思う。
 今後も、木工の伝統的な技法を駆使して、木工房宗太郎の家具・木工品を作っていきたい。
 そのための、努力・苦労を惜しむこと無く。
 長く使っていただくために。
 長い時間を掛けて一生懸命に成長してきた木に、改めて長く生きてもらうために。

Since 2003-05-25 Moku-koubou Soutarou