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木工四方山話(Moku-koubou Soutarou)

最終更新日:2005-06-10


No.012【長く使える家具について】・・・2005-02-04


 先日、ある有名な家具メーカーの椅子を拝見する機会があった。

 とある雑貨屋に置かれた数脚の椅子は、流石そのメーカーだなと思えるスタイリッシュなフォルムをし、また、木の家具を作る者としての目で見ると、高度な加工技術にて加工されたものであることが、一目でわかるものであった。

 そのメーカーは、木の家具に興味のある方や、家具製造に携わっている方、また、それを志している方なら、必ず知っていると言って良いメーカーである。

 私自身も、工房を立ち上げる前に、一度、そのメーカーの聖地とも言える地を訪れ、作業場やギャラリーなどを見学し、素晴らしい作品の数々を見た。


 このメーカーは、理念のひとつとして、百年使えるもの造りを掲げている。

 素晴らしい理念である。
 出来るだけ長く使える家具造りを目指す当工房にとっては、一種の目標の様に思える理念である。

 何故目標なのか?
 ”出来るだけ長く”や”より長く”とは言えるが、”百年”という風に定量的に言う自信が私にはないからである。
 百年前に私が作った家具が、今ここにあれば、自信を持って言えるのであるが・・・。

 だから、先達の作った家具を機会ある毎に見、また、その技術を学び、試作し・・・という私自身の精進が、家具を作り続ける間、ずっと続くと考えている。
 ”より長く”使える家具を作るために。


 使い捨ての時代が残したこの地球への多くの爪痕。

 多くの森林が伐採され、不用になったものはゴミとして捨てられ、焼却され。
 人工的材料を多く開発し使い、結果、自分達の身体を痛め。

 地球が、地球上の全てのものが悲鳴を上げている・・・人間の都合で。


 リサイクル、リサイクルと大声で言う前に、考えるべきことが多いと思う。

 ”なぜ、リサイクルしなくてはいけないのか?”

 壊れ、捨てなくてはいけなくなるから、自分達の身体に悪いものを使い、地球環境に悪いものを作り、廃棄しなくてはいけなくなるから、リサイクルしなくてはいけないのではないでしょうか?

 捨てさえしなければ、リサイクルなんて考えなくていいのである。

 もちろん、捨てなくてはいけなくなった理由には、いろいろなものがあるでしょう。
 でも、その理由が、壊れて・・・しかも、修理が出来ないから、だとしたら・・・。
 だとしたら、この責任の多くは、製造者にあると私は思う。

 お客様のニーズは、”良いものをより安く”であることは、間違え無い。
 同じ物なら、より安い方が良いことは、当然である。

 あくまでも、”同じ物なら”である。

 企業努力で、同じ物をより安く作れる様になったのであれば・・・。


 見た目だけ同じでも、中身の違うものがあります。
 デザイン性向上のために、品質を犠牲にしているものがあります。
 安く作るために、品質を低下させているものもあります。

 売れさえすればいい・・・新品の時に格好良ければいい。
 儲かりさえすればいい・・・楽に量産できればいい。
 
 そんな考えは、もう、いい。


 先日、私が見たそれらの椅子には、以前見たそのメーカーの家具とは、大きく違うところがあった。

 貫(ヌキ)を設けない4本の脚は、椅子そのものをスマートに見せる効果を充分に果たしていた。

 貫が無いことで、脚が完全な”片持ち梁構造”となるため、脚の付け根に働く力は、貫がある時に比べ、非常に大きなものとなる。
 脚の取付部の構造(仕口・継手)によほどの工夫が必要だと思う。
 背の無いスツールや、体重の軽い子供用椅子ではないのであるから。


 百年使えるもの造りを理念に掲げるメーカーの椅子である。
 私は、期待して、その椅子の脚の取付部を座面の裏側から、覗き込んだ。

 脚は座板に丸ホゾで、差し込まれ、クサビで締められており、斜めに差し込まれた脚の胴突は、ただ点当たりで、座板の裏に接触しているだけであった。
 ホームセンターで売られている安物の椅子に良く使われる、量産品に向いた構造。

 私は、家に帰り、メーカーのHPを開いた・・・理念を変えたのかと・・・。
 そこには、以前と同じ理念が掲げられている。

 私の様な未熟者には理解できない、構造の工夫がその脚の取付部にあると言うのか?

 確かに、ガタがくれば修理すればいい。
 しかし、あまりにお粗末な構造。

 ホームセンターで売っているそれとは、明らかに違う価格。
 もちろん、ブランド名で、売れるだろうが・・・。


 私が、ある意味目標と考えた理念は、何だったのか。

 ある種の裏切りを受けた時の様な感じを引きずる私が、今、ここにいる。

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