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木工四方山話(Moku-koubou Soutarou)

最終更新日:2005-12-03


No.025【鑿(のみ)の裏出し(裏打ち・裏押し)における考え方のポイント】・・・2005-12-03

 先日、現在、訓練校で木工を学ばれている方々と話す機会があり、いろいろな話しをさせていただいたのですが、その中で出た、鑿の裏出しに対する質問の内容や、訓練生の使っている鑿の中に、裏出しが適切でないものがあったことが、気に止まりました。

 そこで、今回は、木工を学ばれている方のヒントになればと思い、鑿の裏出しに関する私の考え方をここに記します。
(考えてみれば、鉋の刃の裏出しについては割りと詳しく説明してあっても、鑿の裏出しについては、鉋の刃の裏出しに順ずる・・・程度の説明しかしていないものや、鉋の刃の裏出しとの違いのみ説明し、なぜ、そうなのかを書いてない参考書・教科書が多いように思う。)

 はじめに、裏出し、裏打ち、裏押し、裏すき、べた裏、などの言葉については、説明しません。
(この程度のことは、知っているという前提で話しをすすめます。)


 鉋や鑿などの片刃の刃物の裏には、裏すきと呼ばれる窪みがあります。
 この裏すきがあるため、裏出しという作業の必要性が出てきます。

 では、裏すきは、何のためにあるのでしょう?
(考えたことは、ありますか?)

 裏出し(裏押し)の重要な目的は、片刃の刃物の裏(ハガネ側)を平らな鏡面に仕上げるということです。
 平面にするのは、刃を砥いだ時の刃先を直線とするためや、鉋の場合は、裏金と密着させるため、鑿などの場合は、裏を木材加工の基準面(定規)にするためなどです。
 鏡面に仕上げるのは、刃先の切れ(刃のつき)を良くするためなどです。

 では、裏すきが無い状態(べた裏)だと、どうなるでしょう?

 裏を押す時に、金盤(金とこ、金砥石)との接触面積が大きくなり、面圧が低くなるため、裏がでにくい。
 精度の高い平面にしにくい。
(金剛砂の逃げの関係や、変形による面圧分布の関係上、周りの方がダレ易い)。
 などなど。

 これらの理由により、べた裏は、駄目・・・と言われるのです。
(逆を言えば、きちんとした平面の鏡面に仕上げることが出来るのであれば、全く駄目、と言うことではないとも言えるでしょう。)

 ちなみに、鑿の場合、一枚裏より二枚裏、更には、三枚裏(三つ裏)が良いと言われる理由は、裏出しは適度にしやすく、基準面(定規面)が広いためである。
(幅広の鑿の一枚裏のものは、材の幅が狭いなどの場合に、裏すきに落ち込む場合があるため。) 


 次に、裏は、平面な鏡面でありさえすれば良いのであろうか?・・・本記事のポイント。

 答えは、No!である。

 刃物を研ぐときに、鎬面が平面で、刃先が仕上がっていさえすれば良いか?ということと同じである。
 刃先角は、適切か、刃先線は、左右に倒れていないか・・・つまり、平面の物理的位置というか、角度などの状態である。

 裏を押すときに、刃先に力をいれ押せといわれる。
(刃の砥ぎと同じで、面はきちんと接触させた上で、荷重分布を刃先に集める。)
 これは、裏打ちし出た個所の力を集中する目的と、刃元(鑿でいえば、首に近い方)を多く減らさないためである。

 なぜ、刃元が多く減ると駄目なのか?

 刃元が多く減った場合の問題点は、鑿に顕著に現れるので、以下は、鑿を中心に説明する。
(白書なども、使い方によっては、同じ。)

 次の図は、鑿を側面から見たものです。
クリックすると、拡大されます。

 上の二種の鑿をみて、どちらが使い安い、使える場面が多い鑿であるか分かりますか?

 答えは、上の鑿です。

 前にも述べた様に、鑿には、裏(基準面)を材や定規に当て、材を加工するという重要な役割があります。
 この場合、裏が、平鉋でいうところの、鉋台の下端と同じ役目を果たします。

 この加工方法では、上の鑿は、刃先からA点まで材(定規)の上に追い込んで使えるのに対して、下の鑿は、刃先から、B点までしか、追い込んで使えないのです。
(それぞれの鑿を追い込むと、A点、B点で、材が鑿が当たる。)
 つまり、下の鑿の方が、使える加工範囲が狭く、多く場面で、
鏝鑿(こてのみ)を使わなくてはいけないということになるのです。


 では、なぜ、下の鑿の様になるのか、?

 購入したときからの場合もあるでしょう。
 しかし、ほとんどの場合は、裏出しの悪さの結果でしょう。
(新規に、鑿を購入する場合に、チェックするのは、当然ですが。)

 では、裏出し方法の何が悪いのか?

 主に、どう裏を出すのかというビジョン、傾向管理を頭において、裏出しをしていないためであると、私は推測します。

 これは、刃の砥ぎにおいても同じことが言えます。
(今後、刃先角をどうしたいのか。今の角度を維持したいのか。鈍角にしていきたいのか。鋭角にしていきたいのか。)


 図の上の鑿の様にするためには、次の様な考えなくてはいけないことがあると思います。

@裏打ちをした後に、裏押しをするほうが良いのか、裏打ちをせずに、裏押しをするほうが良いのか。
 ・場合によっては、裏打ちをしないほうが良い。
 ・図の下の鑿よりは、べた裏の鑿の方が良い。
(私が
十本組で買った鑿の中の一本が、購入時より形状が悪かったため、べた裏にして、使っています。)

A裏押し時の力配分、および、金剛砂の分布は適当か?
 ・平面を密着させた上で、刃先に力を。
 ・金剛砂は、刃先に多く(刃元は、少なくて良い。)
(ダイヤモンド砥石を使う場合は、金剛砂による配慮が出来ないので、力配分を、より、注意!)


B裏打ちし過ぎていないか。
 ・裏打ち不足で、何度もやり直すのが嫌で、打ち過ぎていないか。
 ・打ち過ぎで、刃先が多く裏側に出っ張ると、それを減らすのに、時間が係るため、そのぶん、刃元も減る。



 以上、裏出しについて、述べてきましたが・・・

 何の加工をするのでも、何の道具を仕込むのでも・・・きちんと考えて、それをきちんと行動に移すことが、重要である。

 こう教わったから、そうする・・・では、良いもの、良い道具にはならない。
 
 疑問に思うこと、理解すること、そして、それを更に考えること。
 これが大切です。 

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