木工四方山話
(Moku-koubou Soutarou)
最終更新日:2006-02-01
No.026【鑢(やすり)の使い方について】・・・2006-02-01
木工をする上で、使いこなさなくては道具は、木工用の道具だけであるとは限らない。
なぜなら、木工用道具の多くに(ほとんどに)、鉄や真鍮などという金属が使われており、それらを、必要に応じて、加工したりしなくてはいけないからである。
道具には、それぞれの歴史(先達の経験・知恵など)を踏まえた適切な使い方というものがあり、同じ道具でも、国が変れば使い方が異なる場合もある。
ここでいう使い方とは、例えば、鋸(のこ)を引いて使うか、押して使うかという様な意味である。
日本の(木工用)鋸のほとんどは、引いて使う様に作られているが、外国では、押して使う様に作られているものものも多い。
木工用の道具である鋸を例に挙げたが、これは鉄鋼用の道具でも言えることで、当然、適切な使い方というものがある。
先日、木工を学ばれている方が、何らかの金属に、鑢(やすり)をかけている音を聞く機会があった。
木工用機械の影から聞こえてくるその音を聞き、またか・・・と私は、思った。
今までにも、同様の音を何度も聞いたことがあったからである。
金属に、押すともなく、引くともなくかける鑢(やすり)の不愉快な音・・・。
鑢(やすり)の音が止み、彼は、手に鑿(のみ)のカツラ(金輪、冠)を手にし姿を表わした。
どうやら、鑿(のみ)の仕込みが悪いためか、カツラを叩いてしまうために出た返り(かえり)をヤスリで削っていたいた様である。
私は、彼に質問してみた。
ヤスリは、引いて使うのが本当か、押して使うのが本当か・・・と。
彼は、引いて使うと答える。
その後、間違いを私に指摘された彼は、ヤスリの表面を見、触って、納得していた。
そう、(鉄鋼用)ヤスリのほとんどは、押して使う様に作られているのである。
これは、金切鋸(かなきりのこ)も同じであるが、金切鋸は、刃を逆向きに取り付けることができるため、誤って、引いて使う様に取り付け、使っているひとを見たこともある。
今使っている全ての道具の使い方を、きちんと学んで(習って)きた訳ではないであろう。
何気なく、使って来た道具も多いであろう。
だとしたら、それらの道具の使い方を、今一度、チェックしてみては、如何だろうか?
自分が、正しい使い方をしているかどうか。
私に指摘された彼がしたように、ヤスリなどは、その表面を見て、触るだけで分るのであるから。
意識して、見て、考えれば、分るのである。
正しく使い、正しく加工しよう・・・という、意識さえもっていれば、見ようと思い、考えるはずである。
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