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木工四方山話(Moku-koubou Soutarou)

最終更新日:2006-03-16


No.028【面取りについて】・・・2006-03-16


 先日、工房に来られたお客様が、塗装中の私の作品を見ながら、次のようなご質問をされた。

『どうして、面を取るのですか?』

 私の作品の内、箱物などの角材を使うものの多くは、明確な角面を取ることが多く、それが、目に付いたものだと思う。

 その場では、家具に角が立っていると、人が足などをぶつけたときに、怪我をし易いなどの簡単なご説明をさせていただくに留めたが、ここで、少し詳しく説明しておきたいと思う。


 まず、”面取り”とは、何か?

 ”面取り”とは、木工に限らず工業製品において、角材などの角部(稜線)を削るなどの加工をし、丸みやその他いろいろな形状にすることと言えば良いであろうか。
 JIS(日本工業規格)の製図では、45°角面を”C2”,丸面を”R2”などと表記するように規定されている。
(”R2”、”C2”の”2”は、面取りの大きさを表す数値で、2mmのことである。)

 なぜ、”面取り”と呼ぶかについては、調べたことは無いが、本来なら、”角取り”あるいは、”稜取り”とでも呼ぶほうが、適切であるようにも思える。


 木工の世界では、数多くの面取りの種類があり、一部を上げると次のようなものがある。

 切り面(角面)、エテボー面(サルボー面)、丸面(坊主面)、さじ面、几帳(きちょう)面、銀杏(ぎんなん)面、瓢箪(ひょうたん)面・・・など等。

 宗太郎の使用する面取りは、基本的に、角面と丸面だけである。
 その理由としては、必要以上の飾り加工をデザインに取り入れることが、嫌いであることと、角面・丸面は、サイズをいろいろ選べること、そして、多くの面取り加工は、トリマーという電動工具を使えば、可能ですが、仕上りが悪いため、手持ちの手鉋で加工出来る面取りを採用するためである。


 次に、お客様のご質問でもある、”面取り”の目的は、何か?

@人の保護
A材の保護
B意匠(デザイン)

 私が今、思いつく目的は、上記3点である。

 @の人の保護とは、製品になった角材の角が立っている(90度)と、その角に人がぶつかったり、手や足をぶつけたときに、怪我をし易いので、それを避ける(保護する)ということである。

 基本的に、何かがぶつかったりする可能性がある、角部は、何らかの面取りを行なうべきであると考えます。
(例え見えない個所でも、家具を移動するときなどの、手で触る個所は、面取るべきであり、そうしないと、手を切ったりもする。)


 特に、お子様が使用する家具類や、お子様が居られる家庭で使用される家具類は、出来るだけ大きな面取りを施すべきと考えます。

 大人にとって、足や腰などをぶつけるだけで済む高さの角に、お子様がぶつかり、顔、頭、目をぶつけ、大怪我をする可能性もあるのである。

 以前、伺わせていただいたお客様のお宅に、立派な民芸調の長椅子が置かれており、その背もたれの端の部分に、クッション材が巻き付けてあるのを見たことがあった。

 その理由を尋ねると、お孫さんが遊びに来たときに、走り回り、良くその角に頭や顔をぶつけて怪我をするためと言われていた。

 デザイン、効率優先の、望ましくない家具と言えるであろう。


 Aの材の保護とは、製品になった角材の角が立っている(90度)と、その角に何かがあたると、材の角がつぶれ易い(傷になり易い)ので、それを避ける(保護する)ということである。

 基本的に、何かがぶつかったりする可能性がある、角部は、何らかの面取りを行なうべきであると考えます。


 Bの意匠(デザイン)とは、言葉のままである。

 面取りの有無、サイズ、種類で、印象も大きく変わるため、実用品でありながら、美しさを求められる家具にとって、重要な選択項目であると言える。


 この3点の優先順位は、と考えると、やはり、@ABの順である。

 面を取るには、手間が係るし、デザインが崩れる場合もあるかもしれない。
 しかし、やはり、”安全第一”である。


 少し横道にそれるが・・・”安全第一”という言葉は、多くの工場などに大きく書かれている言葉であり、一見、工場での作業の安全ととらえられがちであるが、私は、それだけではないと思う。
 生産した製品を使用する人(お客様)の安全も含まれていると、考えるべきである。

 お客様が怪我をしやすい製品は、作るべきではない。


 ちなみに、”安全第一”という言葉には、続きがあるのを、ご存知だろうか。

 ”安全第一 品質第二 利益第三”

 お客様を含む製品の携わる全ての人の安全が、第一であり、製品の機能等の品質が第二、そして、企業としての利益追求は、最後ということである。
 安全・品質をないがしろにし、利益さえ出れば良いという考えは、論外といえるであろう。

 ところが、安全・品質をないがしろにした物作りをする製造者が多いから、PL法(製造者責任法)などという法律を作らなくてはいけないのも事実である。


 安全や品質を確保することは、容易なことではない。

 全ての経験・知識を使い、常に、意識してもの作りを行っていくことが、重要と言えるであろう。


 話しを戻すが、”面取り”とは、”たかが面取り、されど、面取り”と私は考える。

 他の方の作品を見るときに、面の処理に良く目が行く。

 面の処理をきちんと(正しく)してある作品は、往々にして、全体の作りも良い。
 そして、いい加減な面の処理しかしていない作品は・・・。

 デザイン・効率重視で、ほとんど面取りをしていない家具は、私は、嫌いです。
 そして、お客様にそれを求められても、お作りできません。

 ベニヤ板を4面貼りつけた家具を見なれたお客様には、面取りの小さな(無い)デザインの家具が、美しく見えるのでしょうか?
(ベニヤ板を4面貼りつけた家具は、大きな面を取りにくいため、必然的にそうなるだけである。)

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