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木工四方山話(Moku-koubou Soutarou)

最終更新日:2006-06-13


No.033【留について】・・・2006-06-13


 伝統的な木工の考えの中に、直行する部材が同じ面(つら)となる場合は、
留(とめ)腰付き剣先(けんさき)などの処理とすべきというものがあります。


 これらは、いずれも、次の様な点を配慮したものであると考えられます。

@部材同士の内側の角の面取りが、どの様な形状であれ揃い、美しい。

A木口を見せない。

B高い加工技術の誇示。


 上記@については、多くの種類がある
面取り形状のいずれにも対応できる、合理的な考え方であると思います。

 上記Aについては、多くの場面で言われることでありますが、往々にして、強度低下や、手抜きを誤魔化すなどに繋がる傾向が多い様に思えます。

 上記Bについては、確かに、手間は食いますが、それほど高い技術でもなく、むしろ、”すべきといわれている処理をしていない、レベルの低いやつ”と、言われたくない、あるいは、思われたくないために、やっているのではないかと、思います。
 現に、留にしないですむために、面落ちとし(チリを設け)、逃げている作家も多いようです。


 では、当工房では、どうしているか?

 当工房では、特別な理由が無い限り、留などの処理は、極力、行わないようにしています。
 その理由は、以下の様なものです。

a:留痩せ(とめやせ)による強度(品質)低下を避ける。

b:留痩せ(とめやせ)による見栄えの低下を避ける。

c:留加工、留痩せ対策加工による、工数アップを避ける。

 上記@〜Bの必要性とa〜cの理由を比較し、留処理を行なうかどうか決定していき、結果として、留としない場合が、圧倒的に多くなっています。
 出来ないからしないのではなく、出来るが、すべきで無いと考える場合はしないのです。


 ここで、留痩せ(トメヤセ)の現象について、説明しておきたいと思います。
(職人の中にも、理解していない者もいるようなので・・・。)

 
【木材の伸縮について】にて、説明した様に、木材は、ほとんど短くはならないが、細くなり(痩せ)ます。
 このため、起きるのが、留痩せです。

 次の図を見ていただきたい。

 二点鎖線で書かれた線が、製作時の状態であり、実線が、永年変化で木材が痩せた後の状態です。

 木材が痩せようとする場合に、留の場合、留先が突っ張ってしまうため、赤色の矢印で表す方向に、縦横それぞれの部材が、やせていくことになり、その結果、留の内側に隙が出来るのです。
 この隙が、上記bで言う見栄えの低下に繋がるとともに、接合面積の低下により、当然、上記aで言う強度の低下に繋がるのです。


 では、この留痩せを避けるには、どうすれば、良いか。
 
留め形通しホゾ割りクサビ止め接ぎとするか、千切りを入れるかなどの対策が必要と言えるでしょうが、上記cに係わってきます。
 工数がアップするということは、つまりは、納期が延び、価格が上がるということです。


 では、留としない場合、どうなるか。
 次の図を見ていただきたい。
(組み手・・・3枚組などの場合)

 きちんと加工され、組み立てられた組み手は、図の様に、内側方向に痩せていき、隙間も開かず、強度低下もしないのです。
(ホゾで言うところの胴付き面はついたままです。)

 この場合、部材同士の内側の角の面取りの処理は、どうするのか?
 角面の場合、当方では、次の写真の様な処理を多く採用しています。

 この処理方法については、加工精度の悪さを誤魔化しているとか、目違いから逃げであるとか、いろいろ言われる方が居られるが・・・私は、その様には、思っていないため、自信をもって、多用しています。

 この処理のメリットとしては、次のような点が上げられます。

・留にしていないため、強度低下に繋がらない。
・面を鉋(かんな)や鑿(のみ)で加工できるため、面の肌の仕上りが良い。
・木目が直行する接線の縁を切っているため、塗装の油砥ぎ時に、横摺りをしなくて良い。
・木目が直行する接線の縁を切っているため、木材の痩せ量の違い・変形による目違いが目立ちにくい。


 木工房 宗太郎では、作り立ての時だけ、美しく・丈夫であれば良いのではなく、先々まで、出来るだけ美しく・強くあって欲しいという考えの元に、木の収縮をイメージし、シミュレーションした上で、構造、組み手や面の処理などを決定しています。
 例え、伝統的な考え方であるとしても、適切でないと判断できる場合は、採用しません。
 なぜなら、伝統工芸展に出展するための木製品を作っているのではなく、ご注文いただいた方々に、長く使え、長く愛される家具を作っていきたいと考えるからです。



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