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木工四方山話(Moku-koubou Soutarou)

最終更新日:2008-11-07


No.038【バンドソー(帯鋸)ブレードの破断に関する定量的検討他】・・・2008-10-13

 深く考えずに、経済的・スペース的理由により、小型のバンドソーを導入し、その結果、ブレードの破断に悩まされ、これを自分なりに理解し、克服しようといろいろと聴き、調べ、机上検討等を行うはめになってしまった。

 小型のバンドソー特有の技術的資料は少いため、いろいろなところから集めた点を線にし、面に繋げるのに苦労をしたので、ここに記しておく。

 これから小型のバンドソーの導入を考えている方や、今、小型のバンドソーに苦労している方は、必読あれ。
(技術的なことはわからないという方は、はじめに結論のみをまとめておくので、その箇所のみ読まれたらよいであろう。)


【結論】
 正常な状態で使用される小型バンドソーのブレードは、ホイール通過時にブレードに発生する曲げ応力の繰返しにより疲労破壊(破断)する。
(あくまでも、他の要因で破断しない場合である。)
 よって、小型バンドソーの選定やブレードの選定においては、以下の2点が重要となる。

a:小型バンドソーの選定においては、出来るだけホイール径の大きなものを選ぶべし。
 最小でも、16″(410mm)程度以上が望ましい。
理由:ブレードの選択範囲が広がる。
   (ブレード厚みの制約が少なくなる。)
    ホイール径が小径のものは、ブレードの破断が早い。

b:ブレードの選定においては、ホイール径を考慮し、ブレードの厚みを決めるのこと。
(詳細は、参考資料:『図1:ホイール径と理想ブレード厚・実用ブレード厚』 を参照方。)
理由:厚いブレードほど、破断するまでの時間が短くなる。


【収集情報・検討事項】

●のこ身の引張り強さ:140〜160 kg/mm^2
[JIS G 4401(炭素工具鋼-SK5,6)〜4404(合金工具鋼-SKS5,551)]
 但し、これは、(大型)木工用機械に関する資料に記載されているものであり、ブレードの製作メーカーの資料によるものではないので、多少異なる可能性あり。

●ブレードの理想の厚みとその最大曲げ応力
 ネット上で”ブレードの厚みは、ホイール径の1/1000”という書き込みがあった。
 この時のブレードに発生する最大曲げ応力(σb)を計算すると、以下となる。

σb=E/(1-ν^2)・t/D=20000/(1-0.3^2)・1/1000=22kg/mm^2 
(E:縦弾性係数、ν:ポアソン比・・・それぞれ、炭素鋼としての概略値を使用。)

 次に示す とあるメーカー標準のブレード厚みより考えるに、この値は、あくまでも理想であるように思う。
(10^7回以上の繰返し曲げで、破断しない曲げ応力?)

●とあるメーカーのホイール径毎のブレード厚み標準(ネット上より入手)とその最大曲げ応力値
・ホイール径24"〜30"(610〜762mm)・・・ブレード厚み:0.035”(0.889mm)
 最大曲げ応力:32.0〜25.6kg/mm^2

・ホイール径18"〜24"(457〜610mm)・・・ブレード厚み:0.032”(0.813mm)
 最大曲げ応力:39.1〜29.3kg/mm^2

・ホイール径16"(410mm)・・・ブレード厚み:0.025”(0.635mm)
 最大曲げ応力:34.0kg/mm^2

 以上より、実用的には、最大曲げ応力の上限は、40kg/mm^2(?)と私なりには、考える。
 但し、今後、検証していく必要があると考える。

参考資料:『図1:ホイール径と理想ブレード厚・実用ブレード厚』
(2008-11-07:図中に、とあるメーカーの推奨ブレード厚みを追加。)
参考資料:『図1:ホイール径と理想ブレード厚・実用ブレード厚』
※上図より、メーカー推奨の厚みのブレードを使用しても、小径ホイールになるほど、応力条件がきつくなる・・・つまり、破断が早いことが判る。
※印:2008-11-07追記


●最大曲げ応力値とブレードの破断時間(使用可能時間)の関係
 他の要因を除いて、ホイール通過時にブレードに発生する曲げ応力の繰返しにより疲労破壊(破断)するとすると、のこ身材質ののN曲線より読み取ることが出来る。
 しかし、残念ながら、この資料は手元に無いので、手元にある資料(0.22%炭素鋼)より無理やり推定すると・・・1kg/mm^2応力値が減る(増える)と、破断時間(使用時間)は、50〜100倍(50〜100分の1)程度になると考えて良いのではないだろうか?

 但し、実際には、他の応力等の要因(張力による応力、応力集中、遠心力、振動、損傷等々)があることや、ブレードの材質・熱処理等がメーカー・製品毎に異なるはずなので、これ通りにはならない可能性は大きい。

 なお、ここで言う破断時間とは、曲げ応力の繰返し回数のことであり、実際にブレードが回転している時間のことである。
 また、ブレード速度とブレード長によって、一定時間における繰返し回数は変わってくるので、バンドソーの機種が異なれば、時間的には変わってくることになる。

●その他の応力(『木材工業ハンドブック』より)
・のこ身の腰入れ、背盛りによる初期応力:3kg/mm^2程度、あるいは緊張応力の20%(幅のせまいブレードには、無し?)。
・上部ホイールの傾斜による曲げ応力:0.5°で3kg/mm^2。
・歯底形状による応力集中係数:1.30〜2.50(普通の歯形で、1.60〜1.65)
・遠心力による引張り応力:2kg/mm^2以下。
・緊張応力:6〜12kg/mm^2。
 ここに記した値が、このまま小型バンドソーに当てはまるかというと疑問であるが、ホイール通過時にブレードに発生する曲げ応力に比して小さな値であること、あるいは、繰返し応力で無いことを考えると、ブレードの破断がいずれの要因により発生する可能性が高いかは、自ずと判る。

●バンドソーブレードの接合(蛇足?)
 他にも、方法はあるが、溶接等の高い技術を持たない者には、専用の溶接機(バット溶接機)の使用がお勧めである。
メーカー:東京新電機株式会社

 これは、スポット溶接と同じ原理で、ブレードを突合せ溶接する機械で、ブレードの切断装置、グラインダー、焼鈍機能なども備える機械である。
 一部のバンドソーには、この機械を搭載したものがある様であるが、容量の小さいものが多い(だけ?)ので、注意。
(バット溶接機は、容量により、溶接できるブレードの大きさ(幅×厚み)が決まる。)

 バット溶接機自体は、高価なものであるが、以下のメリットがあるので、長い目で見ると欲しい機械である。
・巻き(コイル)の長い状態で、ブレードを購入できるので、単価が下がる。
・破断したブレードを何度でも溶接でき、何度か溶接することにより、短くなってしまい使えなくなってしまったブレードも、継ぎ足すことにより、使えることになるため、使い捨てにならない。
(刃の切れの鈍化による限界は、当然ある。)

 訳あって小径ホイールのバンドソーを使用される方ほど、持っているべき機械かもしれないが、高価な機械であるため、少なくとも、同業仲間の中で誰かが持っていると助かる機械であると言えよう。

 なお、溶接時の重要なポイントとしては、焼鈍(しょうどん)があげられる。
 ブレードが、溶接箇所より破断する場合は、焼鈍が適切でないと言って良いであろう。
(溶接時に入った”焼き”を確実に”焼鈍”しないと、その箇所より破断して当然。)

 ”焼鈍”のコツをつかむ事が、重要であると言える。

●最後に
 これまで記した内容は、あくまでも、現時点までに、私が収集できた事項・情報等のみを使って、想定的に検討した結果である。
 よって、これからの経験や、他の方のご指摘などで、考え方を改める必要が出てくる可能性があることを踏まえて、参考としていただきたい。
(バンドソーの製造メーカーの方、ブレードの製造メーカーの方、その他専門家の方などなどのご意見・ご指摘を楽しみにしています。)


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